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I LOVE 先輩4

昼休み。 美術室へと向かっていると、遠目に里中の姿を見つけた。 声をかけようとして、思い留まる。 里中の隣に、友人らしき人物がいたからだ。 里中はその相手と何やら仲良さげに話している。 いつも里中から俺に話しかけに来るから、こういう光景を見るのは初めてだ。 もしかして、前に話していた幼馴染か? 俺の知らない里中の姿に、なんだかモヤモヤする。 ……モヤモヤって、何が? 「あっ、藤井せんぱーい!」 「!」 呼び掛けられ、体がビクッと揺れてしまった。 里中は男子生徒に手を振ると、まるでワンコのようにこちらへ駆け寄って来る。 「先輩!鍵借りて来たんで、早速行きましょう!」 「…ん」 きっとしっぽがあればブンブンと振っているだろう里中に適当に返事をすると、不意に視線を感じて顔を向けた。 そこには先ほどの男子生徒がいて、何故かこちらを見つめている。 どうしたのかと疑問に思っていると、やがて彼はこちらに背を向け行ってしまった。 「先輩、絵!絵を描かせて下さい!」 「あー分かったよ。つーか弁当が先だ」 騒がしい里中へと意識を戻す。 しかしあの男子生徒から向けられた視線は、妙に気がかりなものだった。

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