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I LOVE 先輩6

なんだろう。また、さっきみたいにモヤモヤする。 幼馴染なのだから、近しくて当たり前だ。 でもなんというか、自分たちの距離の遠さみたいなものを感じてしまう。 「? あの、藤井先輩?どうしたんですか?」 「……でいい」 「え?」 「刻久、でいい…」 「…ほえ?」 きょとんとして俺を見つめる里中。 言ったはいいものの、だんだん恥ずかしくなってきた俺は、熱くなった顔を逸らしてぶっきら棒に言う。 「部活で、2年にもう1人藤井がいるんだよ。だからみんな、下の名前で呼んでるんだ」 「……先輩。これが、ツンデレってものなんですね」 「っ、違…、俺はただ…っ」 「先輩!刻久先輩!おれのことも是非っ、陽彩って呼んで下さい!」 グイグイくる後輩に、俺は圧倒されて頷いてしまう。 いや、呼びたくないとかではない。 寧ろ良かったというか、なんというか…。 「刻久先輩っ」 「…なんだ」 「ふふっ、呼んでみただけです☆」 「……」 「きゃー!冷たい視線もかっこいい!先輩もほらっ、おれ呼んでくさい!」 「っ、ひ、陽彩…」 「はいっ、陽彩です!」 そう言って里中、もとい陽彩は、嬉しそうに笑みを浮かべる。 その笑顔に、おれの胸は苦しいくらいに締め付けられた。

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