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I LOVE 先輩8

その時、ガラガラと保健室の扉が開いた。 見れば同じクラスの水谷くんだ。 あまり話したことはないけれど、クラスでは中心的な人物なのでよく目立っている。 背が高くて、顔立ちも整っていて、サッカー部ではキャプテンをしていた。 すごい人だと思う。 でもおれは、この人のことが少し苦手だ。 彼はおれを見る時の色が、少し不思議なのだ。 今までも何度か見たことのある色だけど、なんというか、他よりも少し…濁って見える。 「あ。やっぱここにいた。…保健の先生は?」 「……さっき用があるって出て行ったよ。怪我でもした…?大体の物の場所は分かるけど…」 「いや、いないならいい」 「え?」 どういう意味か分からず困惑する。 じゃあなんの為にここへ来たのだろう。 「なぁ、里中。お前、秀明といつも連んでるよな?」 「? ヒデちゃん…?」 何故いきなりヒデちゃんが出てくるのだろう。 話についていけなくて固まっていると、水谷くんがこちらへ近付いて来た。 上体を起こしたおれに顔を寄せて、小さく囁く。 「もしかして、デキてたりする?」 「……え?」 「なんか距離感とか雰囲気?とかさ。普通じゃなくね?」 「……おれは、ヒデちゃんくらいしか親しい相手いないし、普通っていうのはあんまり分からないけど…」 色が。水谷くんの色が濁っている。 それが怖くて怖くて体が震えだしそうだ。 すごく、気分が悪い…。 「本当に友達なだけ?秀明のやつとヤッてねぇの?」 「っ、やるって…?」 「だから、セックス」 「!?」 信じられない。 どうしてそんな事を軽々しく言えるのだろう。 第一おれは男だ。 なんで少し距離感が近かったからといって、そういう話になるのだ。

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