28 / 90
新鮮な先輩2
慣れた手つきでお好み焼きを焼いてくれる三浦先輩。
それを感心して眺めていると、ガラガラッと扉を開く音が聞こえた。
「はい、いらっしゃい……って、なんだ直斗くんか」
「なんだってなんですか、ひどいなー」
「ほんと、陽彩ちゃんの時とは大違い」
ニヤニヤ笑う三浦先輩に、おれは顔が引きつりそうになる。
正直毎回あの歓迎は勘弁して欲しいな…。
玖保先輩も来ることは知っていたが、期待していた刻久先輩の姿はなかった。
あからさまに落ち込んで溜息が出そうになる。
昨日、なんとか最後まで絵を描き終えられた。
刻久先輩の色をどう表現すればいいのか迷いに迷ったせいで完成が遅くなったけれど、自分なりに満足のいくものができたと思う。
でも完成したのは刻久先輩のいない時で、まだ彼に報告できていなかった。
あれから、刻久先輩にキスをされてから、ずっと避けられている気がする。
会えば挨拶を返してくれるし、話もするのだけれど…、なんというか、距離をとられているような気がして…。
あ、でも、以前のような拒絶ともまた違うんだ。
なんというか…、先輩自身も戸惑っている感じがする。
おれも元々人付き合いは下手くそだから、どうすればいいのか分からない。
でも、絵のことは絶対に知らせたい。
昨日描き終えられた時には先輩帰っちゃってたし、今日は土曜日だ。
ノロノロしていたら夏休みが始まってしまう。
だから三浦先輩に誘われた時、刻久先輩が来るかもと期待があったのだけれど…。
「ん?どうした陽彩ちゃん。元気ないな」
「……いえ、大丈夫です」
「そうか?…なんか陽彩ちゃんって、刻久といる時とのギャップが凄いよなー」
「…そんな違いますか?」
「違う違う!刻久いるとキラキラ輝いてるもん。ワンコみたいに元気いっぱいって感じ。…あ、ほら焼けたぞ」
「あぁ、どうも……、あちっ」
刻久先輩に会いたい。
そして知りたい。
なんで先輩は、おれにキスをしたのか。
あの時の先輩は、ほんのりサクラ色が混じっていた。
それはおれの、見間違いじゃ、ないですか…?
ともだちにシェアしよう!