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新鮮な先輩3
ジリジリと日差しが照りつける中、みんながテニスラケットを手に元気に動き回っている。
こんな暑い日に外で体育だなんて、まったくついていない。
おれは夏が苦手だ。
しょっちゅう体調を崩してしまうからいい思い出がない。
「おい陽彩。なにボーッとしてんだ」
「…ぁ。ごめん」
ペアを組んでいるヒデちゃんに声をかけられた。
我に返ったおれを、呆れながらもこちらにやって来て心配してくれる。
「大丈夫か?今日暑いし、具合悪くなった?」
「いや、大丈夫だよ。ちょっと考え事してた」
「…あの先輩のこと?」
「うん。ほら、あそこでサッカーしてるんだ。ちょーカッチョいい」
「…はぁ。お前なぁ」
今言ったことも、別に嘘ではない。
本当に先輩はサッカーをしているし、物凄くかっこいい。
今にもテニスコートから黄色い声援を上げてしまいたくなるほどだ。
でも今ボーッとしていたのは、やっぱり落ち込んでいるからで…
前はあんなにグイグイいっていたけど、今回のはそういうわけにもいかない。
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