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新鮮な先輩5
鼻血の原因は熱中症だった。
保健室に運ばれベッドで横になったおれは、椅子に座って項垂れているヒデちゃんに苦笑いを浮かべた。
「あはは…。なんか、いつもごめんね、ヒデちゃん」
「…いいよ。こんなんもう慣れっこだ」
そう言って顔を上げた幼馴染に、おれは再び苦笑いを浮かべる。
ほんと、何をやっているんだろう。
我ながら情けなさすぎる…。
「…なぁ、陽彩」
「ん?」
こちらをジッと見つめていたヒデちゃんは真剣な顔をしていて、おれは不思議に思いながら続く言葉を待った。
少しの間の後、静かにヒデちゃんが言う。
「なんか最近、様子おかしいぞ」
「え?」
「なんか、心ここにあらずみたいな。…悩み事でもあるのか?」
「!」
驚いて、ついヒデちゃんの顔を凝視してしまう。
彼は相変わらず真剣な顔だった。
そこでふと、この幼馴染にはほんとに迷惑をかけ続けているなと、しみじみと感じる。
ヒデちゃんになら、相談しても、いいだろうか。
おれは刻久先輩が好きで、今までは一緒にいたり、その姿を見ているだけで幸せだった。
でも今は…、正直、自分がどうしたいのか分からない。
「…おれ、確かに刻久先輩が好きだけど。でもだからどうとか、あんまり考えたことなくて…」
「……」
黙っておれの話を聞いてくれたヒデちゃんは、何かを考えるように俯いていた。
やっぱりこんなこと話すのは、迷惑だっただろうか。
この話はもう止めようと、口を開きかけたおれだったが、その前にヒデちゃんがポツリと呟く。
「陽彩は、頑張ってるよ」
「…え?」
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