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新鮮な先輩8
陽彩の幼馴染が保健室を出て行ってしまい、その場には俺と陽彩の2人だけになった。
陽彩は何か彼に言いたいことがあったように見えたが、一体どうしたのか。
続いていた静寂の中で、俺は保健室の中に入り話を切り出す。
「鼻血出してぶっ倒れたって聞いて、マジでビビったぞ」
「……」
「…陽彩?」
俺の言葉に何も返さず、ボーッとこちらを見上げる陽彩に首を傾げる。
まだ具合が悪いのだろうか。
今日は運悪く保健の先生がいないらしく、1時間寝て、それでも不調なら帰宅することになっている。
俺も着替えなきゃだから長くはいられないし、どうしたものか。
「体調どうだ?つーか倒れたってなんで?熱中症?」
「……」
「おい、なんだよ黙り込んで…」
「先輩って、あんな顔もするんですね」
「はぁ?」
あんなってどんなだよ。
まぁ確かに、いつもより余裕ないかもだけど…。
ここに来るまで走ったりとかしちゃったし…。
「あ!」
「っ、今度はなんだ…」
「先輩…!あの…え、絵がっ、絵が完成したんです…!」
「絵?」
絵というのは、俺を描いていたもののことだろうか。
こいつ、俺がいない時にも描き続けてたのかよ…。
「そ、それで…っ、是非先輩にも見てもらいたくて…っ」
「自信はないんですが…」とはにかむ陽彩。
その表情に、胸がいっぱいになる。
あの時、俺といれることが嬉しいと涙を流した陽彩を見た時と同じ感覚だ。
この感情に名前をつけるなら…
きっともう、その答えは分かっている。
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