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かわいい後輩

「おはよ」 「っ、お、おはよ…!」 朝。 寝起きの悪いおれがベッドでゴロゴロしていると、いつものように部屋に入ってきたヒデちゃんによって一瞬で目が覚めた。 彼は至っていつも通りで、おれはつい彼の顔を凝視してしまう。 「なに?」 「っ、いや、何も…」 「陽彩ー?早く起きなさい。あんまりヒデちゃんに迷惑かけちゃダメよー」 その時一階からお母さんの声がして我に返った。 そんなおれにヒデちゃんはニヤリと意地悪い笑みを浮かべる。 「だってさ。今日は自分で朝の支度できるか?」 「で、できるよ…!もうっ」 揶揄われて頬を膨らませながら、おれはベッドから降りた。 確かに全然目が覚めない時なんかは朝ご飯も歯磨きも手伝って貰う時があるけど…、それをいつもネタに使ってくるのはやめて欲しい。 刻久先輩にでも知られた時には恥ずかしさで気絶してしまいそうだ。 「…ぁ」 刻久先輩…。 その名前で昨日の出来事が思い出され、おれは途端顔を赤らめる。 そうだ、おれ、先輩と付き合うことになったんだ。 それでキスもされた。 今度は目元じゃなくて、唇に…。 「陽彩?」 「ひゃいっ!?」 ヒデちゃんの声に上擦った声で返事をする。 そんなおれを無言で見つめ、ヒデちゃんは静かに尋ねてきた。 「先輩と、上手くいったのか?」 「っ、……うん」 「……そっか。よかったな」 おれの頭を撫でて、ヒデちゃんは微笑む。 その顔を見たら、なんだか泣きそうになってしまった。 そんなおれに彼は困ったように笑って、こちらの手を引いてくる。 こうやってヒデちゃんは、いつもおれの手を握る。 おれが辛くて泣いている時も 楽しくて笑いながら歩いている時も 部屋に引きこもってウジウジしている時も ヒデちゃんの手は安心する。 おれは涙を引っ込めて、笑顔で彼の後に続いた。

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