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はじめては先輩2
「ごめんな。うちの家族が騒がしくて」
「い、いえいえっ。賑やかな家族で、おれの家とは違う感じで新鮮です…!」
「へぇ。陽彩は一人っ子なのか?」
「…っ」
「…ん?」
急に黙り込んでしまった陽彩に首を傾げる。
心なしか顔色が悪いけれど、どうかしたのだろうか。
「…陽彩?」
「っ、う、うちは兄が1人います。歳が離れてて、もう家にいないんですけど…」
「へぇ。上京でもしてるのか?」
「いえ、……海外に」
「海外っ?へぇ…、何処の国なん…」
「も、もうこの話はやめましょう!あっ、すごい!テレビなんてあるんですねー!見てもいいですか!?」
「あ、あぁ…」
無理やり話を終わらせる陽彩を不思議に思う。
どうしたのだろう。
そんなに兄の話をしたくないのか?
今日陽彩は俺の家で泊まることになっている。
家に来ていきなり泊まらせるなんてどうかと思ったが、母さんたちの強引な勧めを断れなかった。
陽彩も提案するとすぐに承諾してくれて、現在に至る。
正直俺としては緊張していた。
だってもう俺たちは恋人同士なわけで…。
同性だからって、何もしないわけでもない。
さて、どうしたものか…。
男同士がこの後何をするのか。
一応調べてはいるが、実際となるとわけが違うというものだ。
俺はこちらに背中を向けている陽彩をチラリと見て、気付かれないように溜息をつくのだった。
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