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はじめては先輩4
それから散々母さんたちに絡まれながら夕飯を食べ終え、風呂に入り、部屋へと戻る。
すっかり俺も陽彩もクタクタになっていた。
女というのは、どうしてあんな口が回るのだろう。
「…なんか、悪かったな。疲れただろ」
「いえいえ、楽しかったですよ。ご飯も美味しかったです」
そう言って陽彩はほわんと柔らかい笑みを浮かべる。
俺はなんだか堪らない気持ちになって、陽彩を抱き寄せていた。
これは夢か?夢なのか?
視界いっぱいに広がる大好きな人の顔を見つめて、おれは固まる。
「なにが夢だって?」
口に出ていたのか、面白がるように目を細めた先輩がゆっくり顔を近づけて来た。
そして、そっと唇が重なり合う。
「!?」
「…陽彩」
名前を呼ぶその声がひどく色っぽくて、背筋に甘い痺れが走った。
耐えきれずに「ぎゃー!」と両手で顔を覆うが、腰に回った腕はさらにおれを引き寄せる。
「む、むりむり…!なんかやばいです…!!」
「やばいって何が…?」
「せ、先輩の色気が…っ」
「え?」
ぽかんとおれを見た先輩は、次には気まずそうに視線を逸らす。
「下心丸見えじゃねぇか…」
「ん?あの…?」
「……なぁ、陽彩」
至近距離で見つめ合うおれたち。
先輩はおれの顔にあった手を取って、きゅっと握った。
「次に進んでも、いいか…?」
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