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はじめては先輩5
さきに、すすむ…?
言っている意味が分からなくて瞬きを繰り返す。
この流れで先に進むって、それは…
もしかしなくても?
「え。…えぇ!?先輩っ、え、まさか、その…っ」
「……陽彩を触りたい」
「ひょぇ…!?い、色々と早くないですか!?」
「早い?」
よく分からない。という顔で見られてもこっちが分からない。
他の人と付き合ったりとかしたことがないけど、こういうのはもっと段階というのがあるのではないだろうか。
え。こんなすぐにこういうことってするものなの…?
で、でもおれたち男同士だし、普通の男女と同じように考えてもいいの…?
グルグル目を回す陽彩だったが、また刻久に名前を呼ばれて我に返る。
「陽彩、嫌か?」
「っ、い、いやというか…。その…。まだ付き合ってちょっとですけど…」
「ん?まぁそうだな」
それで?というような顔で見てくる刻久先輩。
え。先輩ってそういう感覚緩いの…?
意外にグイグイくる刻久に、陽彩は狼狽する。
モテる先輩のことだから、きっと今までにも付き合ってきたことはあるだろう。
だからそういう色恋沙汰でも先輩は先輩なわけだが、“先に進む”ということが一般的にどのように進んでいくのか検討がつかない。
「で、でも先輩のお母さんたちがいますし…!」
「…なんとかなるだろ」
「なるんですか…!?」
なんの経験もない自分にはその辺りは見定められない。
でも普通しないのではないか?
いろいろと無茶しすぎではないか…!?
「陽彩」
「!」
反射的に先輩の顔を見上げる。
そしてその真っ直ぐな瞳に息を呑んだ。
先輩。本気なんだ…。
「大丈夫。触るだけだ。流石に最後までしない」
「…っ」
「それでも、だめか…?」
「………だめじゃ、ないです」
もう。どうにでもなれだ…。
おれは完全に開き直って、彼の問いかけに答えるのだった。
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