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バスケ部の先輩
ビーッと、試合終了を告げる音が鳴った。
その瞬間周りからワッと歓声が上がり、相手側のチームが拳を握りしめる。
対してこちらは、蹲るやつ、涙を流すやつ、項垂れるやつと様々だった。
放ったボールがカットされ到達できなかったゴールを見つめて、俺は立ち尽くしていた。
これを決めていれば同点。
土壇場での最後のチャンスだった。
「はいはいお前ら、整列だぞ!」
キャプテンである正樹が、笑顔で部員たちに声をかけている。
「泣くな直斗!県大会決勝まできたんだぞ。胸を張れ!」
「うーっ、せんぱーい…!」
自然と涙は出なかった。
俺たち3年にとっては、これが最後の大会。
あと一歩で全国という夢が途絶えたのだ。
悔しくないはずがない。
でもいつもより悔しさを感じないのは、もう俺には次がないからだ。
今までは「次こそはやってやる」という思いがあったけど、それがもう存在しない。
そっか。
最後の試合って、こんな感情になるんだな。
少し中3の時とも似てるけど、それ以上にこれが最後なんだって実感する。
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