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バスケ部の先輩3
「そういや客席に陽彩ちゃんいたな。すげぇ泣いちゃって、健気だねぇ」
「あぁ」
並んで例をする俺たちに、陽彩は拍手しながら「ぜんばーい…!」と号泣していた。
それを見て部員たちも笑顔になって、大分場が和んだものだ。
「…楽しかったな。部活」
「…うん」
「あーもー燃え尽きたー!」
「何言ってんだ受験生」
ばんざいして声を上げる正樹に苦笑いを溢す。
こいつ、中学校の時も似たようなこと言って喚いてたな。
「これからは受験勉強かー…。刻久は進路決まってんの?」
「…県内にはするつもり」
「なんでって…、あー陽彩ちゃんか。すぐ遠距離恋愛は嫌だもんな〜」
「うっせ」
俺たちが付き合っていることを正樹は知っている。
変なところで勘がいいやつだから、勝手に気付いて問い詰められた。
なんだか隠す気も起きずに肯定すれば、同性という根本的な問題にも触れずに喜ばれ…
歓迎会だとか言ってまたお好み焼き屋に連れて行かれたのは少し前のこと。
「ほんじゃ、俺は先に帰るわ。陽彩ちゃんが待ってるんだろ?早く行ってやれ」
「…ん。…正樹」
「なーに?」
「キャプテン。お疲れ様」
立ち去ろうとした正樹は驚いた顔をして振り返った。
そして次には照れたように笑い、「おう」親指を立てて再び歩いていくのだった。
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