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バスケ部の先輩4

「陽彩」 ちょこんと大人しく椅子に座っていた陽彩が、弾かれたように顔を上げる。 見るからに泣き腫らしたその顔に、つい苦笑いが漏れた。 「先輩!お疲れ様でした!」 「あぁ。試合、見に来てくれてありがとな」 「いえいえっ。おれ、見てて凄く感動しました!皆さんとても、とってもカッコ良かったです!」 本当は人の多いこの場所にいるのは何かと神経を使っただろう。 それでも心から感動してくれる陽彩。 その姿が愛しくて、堪らず陽彩を抱き締めていた。 何故だろう。 今になって、少し泣きそうだ。 帰り道。 2人並んで道を歩いていく。 何気なく陽彩の手を握ると、ピクッと体を揺らした陽彩が驚いた顔をしてこちらを見た。 「あ、あの…っ」 「誰も見てない。…だめか?」 「っ、い、いえ…。だめじゃなぃ、です…」 顔を真っ赤にさせて俯く陽彩。 その姿が可愛らしくて、つい口元が緩む。 「陽彩、大丈夫か?今日大分暑いけど」 「はい。水分補給に抜かりはないですっ」 陽彩の被っているキャップを少し深く被せ直すと、陽彩は水筒を取り出しにこっと笑う。 暑そうではあるが、見た感じ体調は良さそうだ。

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