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不機嫌な先輩6
お泊り以来の先輩の家にお邪魔すると、中には誰もいなかった。
家族は出かけているのか尋ねたかったけれど、その背中から感じ取れる怒気でとても声をかけられない。
そうして彼に続いて階段を上り、先輩の部屋へと入った途端…
閉まった扉にバンッ!と先輩が両手をつき、おれは所謂“壁ドン”ということをされていた。
「せ、先輩…?」
恐る恐る顔を上げると、バチっと目が合ってしまった。
固まるおれをジッと見つめる先輩。
やがてその顔がゆっくりと近づいてきて
唇が重ねられる。
「っ、ぅ、ん…んん…」
「…陽彩。お前には少し、お仕置きが必要だな」
「お、お仕置き…?」
どういうことかと困惑する。
もしかして、そんなに「刻久おにいちゃん」と呼んだことがいけなかっただろうか。
「…っていうのは建前で」
「え?」
「陽彩と、えっちなことしたい…」
「な!?!?!?」
信じられないセリフをこぼした刻久は、パニックになっている陽彩に、再び唇を重ねた。
「ぁ、んっ…、もぅ、や…」
「嫌じゃないだろ。ほら、我慢して」
胡座をかいた刻久の上に背を向けて座った陽彩は、その足を開き、手は刻久の首に回して組まされていた。
初めのキスの際に服を脱がされてしまい、何も身につけていない状態でこんな恥ずかしい姿勢をとらされている。
どうしようもなく恥ずかしくて涙目になる陽彩に、刻久は背後から耳元に囁いた。
「言ったろ。これ、お仕置きだから」
「お、おれが、刻久おにいちゃんなんて言ったから、ですか…?」
「……それは、少し別。もっと根本的なことだ」
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