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不機嫌な先輩10
「…先輩。おれ、先輩が好きです。どうしようもないくらい、好きなんです…」
「…うん。十分伝わってくるよ。俺も変に嫉妬して悪かった」
「え?嫉妬?」
「……っあ。いやっ、その…っ」
なんのことかと首を傾げ、慌て出す先輩をきょとんと見上げる。
嫉妬ってなんだ?
誰に嫉妬してたんだ?
「……あ。もしかして、だからあんなに不機嫌だったんですか?」
「…っ」
「……先輩。椋兄はおれの家族ですよ?」
「知ってる!だから自分でも呆れてるところだ…」
「……嬉しい」
「は?」
「先輩がおれのことで嫉妬してくれるなんて!感激です!光栄です!」
「……あー、うん。ならよかった…」
見えないしっぽをブンブンと振る陽彩に、刻久は汗を流す。
「というか陽彩、はしゃぐならまずパンツを履きなさい」
「あ。そういえばすごい体勢でしたね」
「…もう雰囲気も何もあったものじゃないな」
今日はこれで終わりにしよう。
そう言ってベッドから起き上がる刻久に、陽彩は慌てて手を伸ばした。
「あ、あの…!」
「?」
ぎゅっと刻久の服の袖を握って、陽彩は言い放つ。
「つ、次はちゃんとできるようにっ…、お、おれ、準備っ、してきます!」
「!?」
宣言した陽彩も聞かされた刻久も、その顔を真っ赤に染めて羞恥を覚える。
こんな意気込んで伝えることでもないだろう…、と動揺する刻久だったが、次には陽彩の頭をポンポンと軽く叩いた。
「……まぁ、無理はするな」
「っ、……はい!」
嬉しそうにする陽彩に、刻久は居た堪れなくなり顔を逸らすのだった。
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