64 / 90

不機嫌な先輩10

「…先輩。おれ、先輩が好きです。どうしようもないくらい、好きなんです…」 「…うん。十分伝わってくるよ。俺も変に嫉妬して悪かった」 「え?嫉妬?」 「……っあ。いやっ、その…っ」 なんのことかと首を傾げ、慌て出す先輩をきょとんと見上げる。 嫉妬ってなんだ? 誰に嫉妬してたんだ? 「……あ。もしかして、だからあんなに不機嫌だったんですか?」 「…っ」 「……先輩。椋兄はおれの家族ですよ?」 「知ってる!だから自分でも呆れてるところだ…」 「……嬉しい」 「は?」 「先輩がおれのことで嫉妬してくれるなんて!感激です!光栄です!」 「……あー、うん。ならよかった…」 見えないしっぽをブンブンと振る陽彩に、刻久は汗を流す。 「というか陽彩、はしゃぐならまずパンツを履きなさい」 「あ。そういえばすごい体勢でしたね」 「…もう雰囲気も何もあったものじゃないな」 今日はこれで終わりにしよう。 そう言ってベッドから起き上がる刻久に、陽彩は慌てて手を伸ばした。 「あ、あの…!」 「?」 ぎゅっと刻久の服の袖を握って、陽彩は言い放つ。 「つ、次はちゃんとできるようにっ…、お、おれ、準備っ、してきます!」 「!?」 宣言した陽彩も聞かされた刻久も、その顔を真っ赤に染めて羞恥を覚える。 こんな意気込んで伝えることでもないだろう…、と動揺する刻久だったが、次には陽彩の頭をポンポンと軽く叩いた。 「……まぁ、無理はするな」 「っ、……はい!」 嬉しそうにする陽彩に、刻久は居た堪れなくなり顔を逸らすのだった。

ともだちにシェアしよう!