67 / 90

知らざる後輩3

陽彩と幼馴染の彼にとって、椋は頼れる兄的存在だ。 言うなれば長男が椋、次男が秀明、そして末っ子が陽彩のような関係図になっている。 「おーヒデ、久しぶりだな」 「椋さん戻ってきてたんすね!ったく陽彩、なんで教えてくれねぇんだよ。……って、お前何してんだ?」 「……」 未だ蹲ったままの陽彩に、秀明が首を傾げる。 それに無反応の陽彩に、椋はやれやれと笑みを浮かべた。 「俺が学校まで迎えに行ったら、すっかりへそ曲げちゃって」 「迎えって…、あ。もしかして下校時間に騒がしかったのって、椋さんが来てたから?俺ギリギリまで体育館いたから気付かなかったー」 「悪気はなかったんだけど、もう迎えに来るなって言われてしまった。お兄ちゃん悲しいよ…」 「あー。まぁ陽彩、目立つの嫌いだもんねー」 笑顔で指摘され、今ばかりはヒデちゃんの言葉でも煩わしく感じてしまう。 「そういえばヒデ、何か用があって来たのか?」 「あぁ。さっきママさんと外で会って中入れてもらったんだけど、ウチの母さんがこの肉まん熱いうちに持ってけって」 そう言って袋を差し出す秀明に、椋はそれを受け取りながら首を傾げた。 「肉まん?なんで肉まん?」 「いやー、なんか母さん手作り肉まんにハマってて、つい作り過ぎたらしい」 「えっ、手作りっ?すごいじゃん。うちの母さんなんて料理全然だし。代わりに陽彩が世界一美味しいご飯作ってくれるけど」 「すごいって言っても、肉まん作りに最適な電化製品を買ってから、毎日肉まん肉まんで困るよ…」

ともだちにシェアしよう!