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知らざる後輩6
「刻久ー、1年の子が呼んでるよー」
「ん?」
クラスメイトに声をかけられ、正樹と話していた刻久は顔を上げた。
1年と言われて思い浮かぶのは陽彩だけだ。
しかし陽彩だったら勝手に教室に入って来てワンコのように戯れついてくる。
あいつは俺に対しては基本強引なのだ。
不思議に思いながら入り口で待つ相手の姿を確認し、刻久は目を見開いた。
そこにいたのは陽彩の幼馴染である浅野秀明、通称ヒデちゃんだったからだ。
なんでヒデちゃんがここに…と、話したこともないのにあだ名が定着してしまっている相手に(陽彩がヒデちゃんヒデちゃんと呼びまくるせいだ)疑問を抱く。
そして興味津々といった正樹を残して彼のもとに向かった。
「あ、どうも…。いきなりすみません。俺、陽彩の幼馴染で…」
「うん、知ってる。よく陽彩がヒデちゃ…、浅野くんのこと話してくるから」
「えっ。あ、そ、そうなんですか…」
申し訳なさそうに話しかけてきた彼は、緊張した様子でおろおろとしている。
彼はタッパもあり大人びているから、まるで俺が後輩をいじめているような図にはなっていないが、なんというか…気まずさを感じる…。
「…で、俺に用って?陽彩がどうかしたのか?」
「あ。その…、陽彩は関係あるようなないような…。いや、根本的には関係ありありなんですけど…」
「?」
言っている意味がよく分からず首を傾げると、ヒデちゃんは思い切ったように口を開いた。
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