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知らざる後輩7

「やぁやぁ。態々来てもらって悪いね、藤井刻久くん」 「……いえ」 既に帰りたい欲が湧き上がってくるのを懸命に堪えながら、俺はお洒落なウッドチェアに腰をかけた。 あれからヒデちゃんに深々と頭を下げられながらお願いされ、俺は断ることもできずに陽彩の兄と会うことになってしまった。 指定されたのは自分ではいくことはまずなさそうな洒落たカフェ。 この時ばかりはいつものお好み焼き屋が恋しく感じる。 俺を呼び出して、このブラコン兄貴は何を企んでいるのだろうか。 俺に対して牽制をしようと?それとも忠告? なんにしろ、いい予感はしない。 陽彩兄は慣れた様子で店員を呼び、コーヒーを頼む。 そして爽やかな笑みを浮かべ、俺に声をかけてきた。 「好きなものを頼んで。俺が奢るよ」 「え。いや、別に…」 「構わないさ。君はまだ()()なんだから、()()()()に遠慮しなくたっていい」 「……それはどうも」 何気に強調してくる陽彩兄に顔を引きつらせる。 やっぱこの人、俺の嫌いなタイプだ。 親しくなれる気がしない。 「呼び出した理由を聞いても?」 「ああ。少し、聞きたいことがあったんだよ」 「聞きたいこと?」 予想外の返事に首を傾げる。 すると陽彩の兄は、なんでもないようにサラッと言ってのけた。 「陽彩とは、セックスしたのかい?」 「ブ…ッッ!!」

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