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ピンチな後輩2

あ。考えたらどんどん自信がなくなって来た…。 もし先輩に彼女ができてしまっても、おれはきっと責めることも縋ることもできない気がする…。 だっておれが強引に関わっていったから今があるわけで、初めはただ話せればいいなぁと思っていたのが、おれのわがままで先輩を巻き込んでしまったから…。 「これから、か…。先輩との、これから…」 考えないようにしていたのだろうか。 いや、これまで幸せすぎて浮かれていたのだ。 先輩がおれを受け入れてくれたことが何よりも嬉しくて…、嬉しくて…。 もし先輩に愛想を尽かされてしまっても、そうなるギリギリまで先輩の側に居続けたいな…。 あはは、おれってかなり気持ち悪かったりして〜…。 「……ん?」 あれやこれや考えながら靴箱を開けたおれは、次には動きを止めていた。 靴箱の中に何か入っている。 見れば一通の手紙のようで、おれは不思議に思いながら紙を開いた。 《君には俺の方が相応しい》 「…なに、これ…」 その文面に体が固まった。 これは、なんだろうか…。 何かの悪戯…? でも相応しいってどういう…。 「……間違えて、入れられたのかな…?」 宛名も書いていないようだったし、何も調べようがないならどうすることもできない。 間違いにしても、悪戯にしても、この一回きりで終わることを願おう。 「椋兄にバレないようにしないとな…」 無駄に事を大きくされても困る。 っていうかあの人、いつまでこっちにいるんだろう…。 いい加減家での過度なスキンシップに蕁麻疹が出てきそうだ…。 「早く帰ろ…。遅くなると何言われるか分かんないし…」 入っていた手紙は少し悩んで仕方なく鞄の中に入れた。 何気なくの行動。 この時は他に考え事も多かったせいか、その出来事をほんの些細な事にしか認識していなかった──。

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