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ピンチな後輩5

それから周りが気になって仕方なかった。 いつ何処で盗撮されているのか分からない。 どれだけ周りを警戒しても手紙の相手を見つけることはできないのに、毎日毎日、手紙と写真が送られてくる。 「陽彩。具合でも悪いか…?」 「え?」 朝。いつものように一緒に登校するヒデちゃんに心配されてしまった。 こういう時、本当なら相談した方がいいのだろう。 でも、いざとなると口がなかなか開かなくて…。 こんなの勝手だろうけど、身近な人ほど話せないことってある。 帰り道。1人帰路に着く。 まだ人が多い場所は良かったけれど、だんだん周りが静かになってくると不安が膨れ上がってくる。 ビクビク怯えながら早歩きで歩いて行く。 その時、後ろから足音が聞こえた。 ただの通行人かもしれないが、今はなんでも敏感になっていて振り返ることもできず怖くなる。 足をさらに早めると、後ろの誰かも同じように早くなった気がした。 それが怖くて怖くて我慢できずに駆け出そうとする。 すると、背後から腕を掴まれた。 瞬間全身からブワッと寒気を感じて、掴まれた腕を振り払おうとする。 「いや…!」 怖い。 どうしよう。逃げなきゃ。 「おい、落ち着けって…!」 「!?」 その声に弾かれたように顔を上げると、目の前には玖保先輩がいた。 「な、んで…」 「お、驚かせてごめん。声かけようとしたら、陽彩が走り出そうとしたからつい…」 動揺した様子の玖保先輩を見て、体から力が抜ける。 クラリと目眩がしてフラついたおれを、彼は慌てて支えてくれた。

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