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ピンチな後輩7
「…それって、もしかしなくても、ストーカーだよな…?」
「……」
やっぱり、そうなんだろうか…。
ただの嫌がらせではないのは、なんとなく分かっていた。
でも相手の一人称が《俺》ということは、やっぱり、相手は同性…。
刻久先輩と付き合ってる自分が言えたことではないし、中学の時にも保健室で襲われたことがあったのも事実ではあるが…。
まさか自分がそんなことの被害者になるなんて…。
今になっても現実味がなく、どうすればいいのか戸惑ってしまう。
「それって、いつぐらいから始まったの?」
「1週間くらい前から…」
「誰かには…」
「…話してない、です…」
玖保先輩は食べ終えたアイスの棒を口に咥えた。
それて何かを考えるように黙り込んで、徐に口を開く。
「やっぱ、話すべきだよ」
「……そう、ですよね…」
「うん。このままにしておいても危険なだけだ。確かに事を大きくしたくないのは分かるし、男としてはストーカー被害に遭ってるって言いにくいとは思うけどな」
「……はぃ」
「家族とか。それが嫌なら先生とか…。もし言いづらいなら俺が代わりに…ってのもおかしいか?」
うーん…と首を捻る玖保先輩に、「いえ、そこまで迷惑はかけれません」と遠慮する。
というかこの人って、こんなにいい人だったんだ。
悪い人だとは思っていなかったけど、こんなに真摯に相談に乗ってくれるようには思っていなかった。
いつも後輩のポジションの彼しか知らないけど、本当はとてもしっかりした人なのかもしれない。
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