81 / 90

ピンチな後輩8

「明日の放課後にでも、先生に相談してみます」 担任の先生も苦手というわけではないが、おれとしては部活の顧問の先生の方が打ち明けやすい。 玖保先輩はホッとしたように笑みを浮かべて頷いてくれた。 そして「その…」と言いづらそうにおれに尋ねる。 「これって、刻久先輩にも、言ってないんだよな…?」 「…はい。迷惑、かけたくなくて…」 「うーん…。俺的には、刻久先輩にこそ伝えた方がいいと思うけど…」 「……」 「いやっ、まぁ、別に咎める気は無いから…!悪りぃ、不躾なこと言った…!」 焦った様子で謝罪する玖保先輩に、こちらもあわあわと動揺してしまう。 おれとしても刻久先輩に何も言わないのは、気遣いというより逃げのような気もしていた。 言うことが正解なのかどうか。 それはよく分からないけど、きっと刻久先輩は話して欲しいと思うだろうな。 おれだって、先輩が危機の時に何も知らされなかったら傷つくから…。 *** 部活が終わってから、ちゃんと先生に相談する。 そう考えどこかそわそわしながら帰りのホームルームを終え、席を立った。 今日も朝、靴箱に入っていた手紙と写真。 その嫌がらせなのかストーカーなのか分からない行為は、未だ終わる気配はないようだ。 「おーい里中ー」 「?」 鞄を取った手を止めて、呼ばれた方を向く。 そうすればクラスメイトがやって来た。 「なんか伊藤先生が用があるらしいよ。化学準備室にいるみたいだ。里中、今日日直だろ?」 机にある日誌をチラリと見て言われ、コクリと頷く。 すぐに部活へ行って絵を描きたいが、日直の仕事なら仕方がない。 伊藤先生は化学の先生だ。 今日課題の提出物があったから、それ関係だろう。 伝えてくれたクラスメイトにお礼を言って、荷物を持ち廊下に出た。 まず職員室によって、担任の先生に日誌を届けてから向かおう。 そう決めた陽彩は少し早足気味に歩き出すのだった。

ともだちにシェアしよう!