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ピンチな後輩11
なおも近づいてきた相手は、陽彩のすぐ目の前で立ち止まった。
そしてスッと手を伸ばし、陽彩の頬に触れる。
触れられた瞬間に、ブワッと怖気立ったのを感じた。
「まったく、駄目じゃないか。他の男に触られて。綺麗な君が汚れちゃうだろう?手紙を送って忠告してあげても他の男たちとベタベタして。流石の俺でもそこまで多めに見てあげられない」
一体相手が何を言っているのか、陽彩にはまったく理解できなかった。
ただ口をつぐみ、未だに頬に触れる手に意識が集中する。
相手の手が輪郭をなぞるように頬を撫で、そっと指を髪に絡める。
今すぐその手を払い除けて逃げ出したかったが、下手をして相手を刺激してはいけないと陽彩は無意識に察していた。
「ほんと。間近で見ると一段と可愛いなぁ」
「…っ」
「この小さな鼻とか、食べちゃいたいくらいだよ」
そう言って顔を近づけてきた相手に、流石に体が逃れようとした。
けれど信じられないほど強く壁に押さえつけられ、かぷりと鼻を咥えられる。
「……っっ!?」
その信じられない事態に、反射的にギュッと目を閉じ体を震わせた。
最後にペロリと舌で舐められ、ゆっくりと顔を離される。
「大丈夫。陽彩くんに痛いことなんて何もしないから」
そう言って笑う相手が恐ろしかった。
中学の頃の水谷とはまた違う恐怖だ。
こんなこと、異常としか思えない。
それにさっきからどんどん相手から滲み出る色が濁り始めていた。
どんどんどんどん…。
まるで毒のようなドロドロとして濁った色に、気持ちが悪くなってくる。
嫌だ…、怖い…。
助けて…っ。
この人の色が、怖い…!
「陽彩!!」
その時、名を呼ばれた。
その声に目を向け、無意識に息を吐く。
あぁ、綺麗だ。
やっぱり、先輩の色は、誰よりも綺麗だ。
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