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ピンチな後輩12
焦った表情をしていた刻久先輩だったが、次には怒りを滲ませ始める。
今まで見たことがないような鋭い視線で男子生徒を睨みつけた先輩は、一歩、部屋の中へと入って来た。
「おい。何してんだ、お前」
「っ、うるさい…!お前なんかが、俺の陽彩くんに触れていいわけないんだッ!!」
「人の話聞けよ。俺は何してんだって言ったんだ」
「陽彩くんは清い存在なんだぞッ!?それなのにッ、なんで…ッ!」
現実逃避なのか、完全に先輩の言葉を聞き入れない男子生徒はその体を震わせる。
これ以上、彼を刺激してもいいものか。
硬直したまま、陽彩は目の前の光景に固唾を飲む。
しかし刻久は、そんな心配など微塵も考えず、はっきりと相手に告げた。
「陽彩はお前のものじゃない。俺のだ」
その途端、いきなり駆け出した男子生徒がその拳を振り上げる。
思いっきり刻久に殴りかかった相手の背中を目にして、陽彩は反射的に刻久の名を叫んでいた。
迫る相手。
しかし刻久は動揺など一切見せず、繰り出された拳をいなし相手の腕を捻り上げると、勢いよく床に押さえつけた。
男子生徒が「あグッ…!?」と呻き声を上げる。
その光景を茫然と眺めていた陽彩だったが、やがて新たに乗り込んできた正樹と直斗の姿に我に返った。
「はいはいそこまでー!」
そう声を上げた三浦先輩は、刻久先輩の両腕を背後から掴んでバンザイさせる。
その隙に玖保先輩が倒れていた男子生徒を引き上げた。
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