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先輩と後輩

「今回のことは礼を言うよ」 そう陽彩の兄は言って頭を下げてきた。 流石にあの騒動があって陽彩の家族に連絡がいくことになり… 俺は怯える陽彩を引きずって、里中家にやって来ていた。 家には陽彩の母親がいて、それは何度も礼を言われた。 そして少し経ってから陽彩兄が家に帰って来て… 散々陽彩を構いまくったのち、何故か俺は彼に連れられ、また2人きりになっていた。 と言っても以前のカフェではなく、里中家の家の前で並んで立っている。 頭を下げる陽彩兄にどうすればいいのか分からずにいると、やがて彼は顔を上げ、真っ直ぐにこちらを見つめて来た。 「前にも似たようなことを言ったと思うけど、もう一度聞くよ」 「え?」 「君は、陽彩を幸せにできるか?」 真剣にそう尋ねる彼に、俺は一度口をつぐみ 次にははっきりと頷いた。 「必ず」 そうすれば陽彩兄はホッとしたような顔で笑い、スッと携帯を取り出す。 「今の、ちゃんと録音しといたから」 「え」

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