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先輩と後輩2

家の中に入ると、一足早く戻った陽彩兄が陽彩をぎゅうぎゅう抱き締めて頬擦りをしていた。 さっきまでとのギャップを感じ、苦笑いする。 陽彩は帰ってきた俺に気づくと、なんとか兄の抱擁を抜け出してこちらに駆けて来た。 そして俺の左手を掴み、そのまま外に飛び出す。 「お、おい陽彩…!」 「すみませんっ、でも場所変えましょう!近くに公園ありますから!」 そう言ってグイグイと俺の手を引く陽彩。 その時ふと、こうして陽彩と手を繋ぐのは初めてだと気付いた。 初めて握る陽彩の右手は、俺よりもポカポカ暖かく感じた。 「陽彩、キンチョーしてる?」 「!」 だんだんと速度を落とし、2人並んで手を繋いで歩いて行く。 やがて陽彩も手を繋いでいる事実に気づいたのだろう。 なんだかプルプル震えているように感じたので尋ねてみた。 そうすれば面白いくらいに陽彩の顔が真っ赤に染まる。 その横顔を覗き見て、俺は吹き出した。 「お前はほんとに、俺のこと好きだな」

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