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先輩と後輩3

そう言えば、陽彩は開き直ったように顔を紅潮させたまま宣言する。 「も、もちろんです!刻久先輩は運命の人で、白馬の王子様なんですから!」 「っ、…あーはいはい」 「あ!今照れて聞き流しました!?」 「んなことないー」 そんなこんなしていたら、陽彩の言っていた公園に辿り着いた。 2人でベンチに座り、少しの間無言になる。 静かな空間の中、初めに切り出したのは陽彩だった。 「黙ってて、すみませんでした…」 深々と頭を下げる陽彩。 俺はそれを何も言わずに見つめていたが、次には溜息を吐きガシガシと陽彩の頭を撫でる。 下から戸惑う声がする中、敢えて無視しながら口を開いた。 「陽彩の言いたくなかった気持ちは分かる。だから怒ったりはしないけど…。でもやっぱり、肝心なことは、ちゃんと伝えて欲しい」 強張る陽彩の体に腕を回す。 そして次には、ギュッと抱き締めた。 「俺もお前のこと、お前に負けないくらい好きだから」 瞠目する陽彩を、ゆっくりと包み込む。 速まる鼓動を聴いていたら、自然と口元が緩んだ。

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