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第27話
素直に寝仕度をして自分の布団に潜ったら、おっつけ舟而も寝間へやって来た。
舟而は舟而の布団に入って、しかし自分の身体に掛かる布団の端を少し持ち上げた。
「僕のほうに来るかい?」
「え、あ、はい……」
白帆は薄闇の中でもわかるほど顔を赤く染めながら、舟而の掛布団と敷布団の間に身体を滑り込ませた。
舟而の手で布団にしっかり包まれて、白帆の身体の前には舟而の身体があり、どちらも細帯一本だけが頼り、木綿一枚の寝間着姿で、近寄るだけで炭火のように舟而の体温が身体のおもてに迫っていた。
「怖いかい」
「い、いいえ……、多分」
「怖がる白帆に何かするつもりはないよ。僕は一方的に、支配的にするようなのは嫌いなんだ」
「さ、さよですか」
「でも同じ床にいて、端と端に離れてるのも寂しくないかい?」
「さ、さよですね」
白帆がそっと身体を近づけると、舟而はふんわりと腕の中へ包んだ。。
「お前さん、さっきお夏を前にして、どぎまぎしただろう。あれはいけないよ」
おかっぱ頭の黒髪を優しく撫でながら諭す。
「あ、はい」
「こういうことは、二人だけのことにしなくちゃいけない。『秘め事』というくらいだからね、しっかり腹に力を入れて秘めなくちゃ」
「なるほど。だから先生は涼しい顔をされてたんですね」
「お夏は敏いから、僕たちの間に何かあっても、なくても、全部お見通しだろうけど。それでも開き直ってあからさまにするのは違うよ」
「はい」
素直に返事をする白帆の前髪をそっと掻き上げ、露わになった額に自分の額をくっつけた。
「それで、僕たちの間に何かあることにするかい? ないことにしておくかい?」
白帆の顔は見る間に赤くなり、舟而の額に高熱が伝わってくる。
「あ、あることにしますっ」
舟而はくすくす笑った。
「まあ、できるところまでしてみようかね」
舟而は白帆を仰向けに寝かせると、隣に寄り添って手枕をして、微笑みを浮かべたまま、白帆の前髪を優しく撫でた。
「お前はいい子だね」
温かい声でそう言って、手櫛で白帆の髪を梳いた。先の丸い指が白帆の髪の間を滑っていく。
舟而の乾いた温かい手のひらが、白帆の夜気に冷えた耳を何度も掠める。
その手は次第にうなじへ届くようになり、首筋を撫で、鎖骨、肩と撫でた。
「白帆はいい子だ」
前髪に接吻されて、白帆は全身の力が抜けて行くのを感じ、慌てて目を開けた。
「先生、子供扱いしないでください」
「そうかい」
舟而は目を弓形に細め、そっと白帆の唇に自分の唇を触れさせた。
二度、三度と啄むように唇が触れるうちに、二人の身体の芯は温かくなってきた。
舟而は雨垂れのように白帆の頬や額や目尻に唇を触れさせ、くすぐったがって笑う口に、口を重ねて舌を差し込む。
「んっ」
舌が触れ合った瞬間、白帆の身体の中に電気が走った。驚いた身体が勝手に逃げようとするのを、舟而の手にそっと押しとどめられた。
「ん、ん、んんっ」
白帆の舌が奥へ逃げても、舟而の舌は白帆の口内を動き、歯列を辿って、上顎をくすぐる。
「んーっ、んんんっ!」
白帆の身体が強張ると、舟而は口を離して再び白帆の前髪を撫でた。
「白帆、お前さんの舌を味わわせておくれ」
「は、はい!」
白帆はやんちゃな子供のように、べっと口から舌を出した。
舟而は一瞬目を丸くしたが、すぐ弓形に目を細め、白帆の舌へそっと舌を這わせる。
「んあっ!」
舌を舐められて、白帆はのけぞって逃げた。舟而はくすくす笑う。
「す、すみません。あの、私が見た本には、舐めるっていうのは描いてなくて……」
胸の中へ逃げ込んで来る白帆を抱き止めて優しく背中を撫でる。
「やり方は人それぞれで、僕はこういうやり方だってことだよ」
舟而はこめかみに口づけ、白帆の耳の形を舌先で辿った。
「せんせ、くすぐったい……っ。はあんっ!」
舟而は白帆の首筋を舌先でなぞり、そっと寝間着の合わせ目を緩めて、鎖骨まで舌を這わせて
いった。
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