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第60話

 誰にも邪魔されず、気ままに過ごせるのが、内風呂の楽しさだ。 「合口なんて、ご謙遜ですね」  白帆に一歩遅れて風呂釜の縁を跨いだ舟而の脚の間へ、白帆の切れ長な目がちらり動く。 「正当な見立てだと思うけど」  ざあっと湯を溢れさせながら身体を沈め、足の間に白帆を座らせて、自分の胸に寄り掛からせる。 「ふふ。やっぱり合口なんかじゃ、ないじゃありませんか」  白帆は後ろ手に舟而の自称合口を掴み、指を絡めて上下に動かす。 「そんなにしたら、今すぐここでお前さんを斬りつけてしまうよ」  頬に接吻して、からかったつもりが、白帆はすまし顔だ。 「受けて立ちましょう。私の喉を一息に突いて下さいまし」 「喉?」  白帆は舟而を浴槽の縁に浅く腰掛けさせ、その足の間に顔を近づける。 「ああ、白帆……」  指が絡まり、熱くぬめる口内へ含まれて、舟而は目を眇めた。 「ンっ、喉の奥まで切り裂かれそうです……」  舟而は、目を閉じて味わう白帆の黒髪を手櫛で梳いて、口いっぱいに含む白帆の真珠色の頬が、自分の形に歪む様子に目を細めた。  白帆の巧みな舌が裏筋を舐め上げ、笠の縁をぐるぐると辿り、先端の小さな穴を抉る。  含みきれない部分は白帆の長い指が絡みついて、舟而の熱を高める。 「しら、ほ……」  唾液に満ちた口の中でぬるぬると、まるで甘い飴でも舐めているかのように舌を這わされて、さらに唇の輪と指の輪で誘われてしまっては、我慢できる時間は短い。 「出てしまいそうだ、白帆」 「なさいまし」  白帆はその一言だけで、再び舟而の硬直を咥え、舟而は腰に渦巻く熱に呼吸を早めながら、白帆に囁いた。 「この借りはあとで返す」  白帆の髪や肩をそっと撫でながら限界を待ち、上り詰めて熱を放った。 「ああっ、白帆っ!」  うっと腹に力がこもるたび、小さな穴から白濁が飛び出して、白帆の喉を撃つ。  白帆は目を閉じたまま甘受して、放出を終えるとさらに管の中の残滓まで啜った。 「はあっ、白帆っ」 「ふふふ。ごちそうさまでした」  濡れた唇を赤い舌でぺろりと舐めていて、舟而は風呂釜の中へ滑り落ち、縋るように白帆を抱き締めた。 「さて、どんな返礼をお望みかな?」  膝の上の向かい合わせに白帆を座らせて、掬った湯を肩に掛けてやりながら訊く。 「たくさん甘やかしてください」 「相分かったよ」  舟而は微笑むと、白帆の顔中、所狭しと唇を触れさせた。 「可愛い白帆。お前さん自身がお菓子のようだ」 「ふふ、くすぐったい」  白帆は嬉しそうに笑った。 「お前さんを食べてしまいたいよ」 「どうぞ食べてくださいまし」  舟而は柔らかな赤い唇を啜るようにして奪い、舌を差し込んで粒の揃った歯列を辿り、ひたひたと動く舌を絡め取って、飲み込まんばかりに吸った。 「んッ」  白帆の鼻にかかった声も可愛らしい。 「僕のお菓子をよく見せておくれ」  今度は白帆を風呂釜の縁に座らせ、しっかり膝を開かせて、舟而はその全身へ視線を滑らせた。  白帆の身体は隅々まで真珠色に艶めき、胸の粒は桜色をして、脚の間には春霞のような淡い影と、まだ控え目にしている男の姿があった。 「ああ、先生……、恥ずかしいです……」  白帆は全身を火照らせて顔を背ける。 「毎日、人の視線に磨かれているくせに?」 「私の裸まで磨いてくださるのは、先生お一人だけです」  舟而は白帆を湯船の中へ引き戻して抱き締めると、耳へ舌を差し込んでくすぐり、白帆が身体を震わせると少ししつこくして、白帆に声を上げさせる。 「ん、あん。先生っ」  それから首筋、鎖骨と舌で辿り、桜色の小さな実を指の腹で捏ねた。 「んんっ、はあ……んっ」  捏ねられて硬く尖った実を唇で啄み、舌先で転がす。 「あっ、ああっ、ン……」  白帆は舟而の肩に掴まって、胸を突き出す。細い腰が悩まし気に揺らめいていた。  舟而は花束を抱えるように白帆を抱いて、反対側の胸の粒は指でつまんでくりくりと捻りながら、しつこく胸の粒をしゃぶる。 「せん、せい……っ、いきそう、です……っ」 「おいで」 「はあっ、んッ、ああんッ!」  白帆は目を閉じて顔を振り上げ、苦悩から解放されてふわりと笑った。同じように反対側の胸も口の中で翻弄してやると、白帆はまた遂げて、くったりと舟而に抱き着いてくる。 「お前さんは本当に胸が弱いね。いい心地だったかい」 「とっても」 「まだ終わらせないよ」 「はい……」  舟而が立ち上がり、白帆の眼前で瓶を傾けて、ゆっくり垂れてくる香油を塗り付けていると、白帆はその姿を堂々と見て切れ長な目を細める。 「ふふ。刀剣のお手入れですか」 「そうだよ」  白帆の手が混ざって一緒に香油を塗り付けると、舟而の硬度は一層増した。  舟而は白帆を浴槽の中に立たせ、窓枠に掴まらせた。片足を担ぎ上げ、明らかになった蕾と周知に染まった肌を見て、興奮をそのまま白帆の中へ押し込んだ。 「ああ、先生っ」  大きく開かせた足の間へ腰を埋め、揺すぶった。  風呂釜の湯が波立って、複雑な波紋を描く。ぶつかり合う肌の音と、ぶつかり合う湯の音に、白帆の甘く引きずる声が重なって、舟而の劣情をさらに煽る。 「ああ、ずっとお前さん一緒にいたいよ」 「いてくださいまし。私も先生から離れません」  白帆の粘膜がうごめいて舟而を絡め取り、舟而は本能に任せて腰を揺する速度を上げた。 「ン、はあっ、先生……っ! はああんっ!」  白帆がまた極まって身体を震わせるのを抱き締めて、舟而は自分の白濁を二度、三度と白帆の身体深くへ送り込んで果てた。 「もう。私たちはいつもこんなことばかりして。どうして飽きないんでしょうね」  湯の中で舟而の胸に頬を擦りつけながら、白帆は笑う。 「お前さんとすることだから、飽きないんじゃないだろうかね」  欲が静まってもなお、身体を離したいと思うどころか、もっと近くにいてほしいと思って、舟而は白帆を抱き締め、黒髪に頬を押し付けた。

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