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第71話
「んっ、擦れて……、いい気持ちです……っ。ああっ、ああ、擦りつけちまう……」
内壁のふくらみを舟而の屹立へ押し付けて、茶臼を挽くように腰を回す。ぐるりぐるりと根元から揺さぶられて、舟而も下腹部に熱が溜まる。
「ああ、白帆。きれいだ」
白帆は真珠色の肌を朱に染め、硬く胸の粒を尖らせ、舟而に向けて膝を開き、何もかもをあからさまにしながら、無心に腰を擦りつけていた。電気スタンドの明かりに浮かぶ身体には汗がきらめく。
「あああ、ああああっ」
身体の揺れと同時に声を上げ続けている。脚の間では白帆の雄蕊が跳ねまわり、その下には、てらてらと光る舟而の雄蕊が、白帆の身体を貫く様子がはっきりと見えていて、舟而も一緒になって呻いた。
「うっ、白帆」
白帆は苦しそうな声を出す。
「せん、せ……っ、気を遣ってしまいそうです」
「僕もだっ、一緒にいかせてくれ!」
舟而は堪らず、白帆の細い腰を掴んで揺さぶり、同時に下から突き上げた。
「きゃっ!」
白帆は小さく悲鳴を上げ、舟而の手に自分の手を重ねながら、天井を仰いだ。
「白帆っ!」
苦しい、苦しい、苦しい。
酸素は足りず、心臓は早鐘を打ち、身体の筋は強張ってくる。
それでも欲望は膨らみ続けて、白帆は舟而の腰の上で飛び跳ねながら、黒髪を左右に振り乱し、天井を仰ぎ、舟而の手を握って俯いて、また空気を求めて天井を振り仰いだ。
「ああ、ンっ、あああ、先生っ!」
白帆の身体が硬直し、舟而の雄蕊も締め上げた。
「はあっ、しらほっ」
舟而の熱の塊も爆ぜて、白帆の中へ粘液を送り込んだ。放出するたびに甘美な快楽が身体を突き抜けて行った。
部屋の中には、しばらくの間、二人の乱れた呼吸だけが繰り返されて、倒れ込んで来る白帆を受け止めると、早い鼓動が伝わってきた。
「はあっ、はあっ。はあ」
白帆は舟而の顔の両脇に手をつくと、身体を少し持ち上げてから、改めてぐっと顔を近づけて、赤い唇を左右へきゅうっと引き上げ、目を細めて言った。
「今宵も、美味しゅうございました」
白帆の黒髪がさらりとこぼれ、二人の顔の周りを覆った。
躍進座の頃と違って、脚本を書き始める前に、まず会社へ企画書を提出しなくてはならない。
「会社と専属契約している先生でも年に一、二本しか決定稿の判子は頂けず、『ぜひ企画書を出してみてくれ』と言われた先生ですら、毎月五枚、十枚と企画書を提出しても、箸にも棒にも掛からないなんてザラだそうです」
白帆は客間で、シュークリームを銀のフォークで切りとって、口へ運びながら話す。
「うん、まあ不採用なんていうのは、駆け出しの頃には当たり前のことだ。僕は会社にとっては実績のない駆け出しなんだから、覚悟はしているよ」
舟而は白帆の口の端のクリームを指で拭い取って口に含みながら頷く。
「会社という数字に責任を持つ組織の中で、文学や演劇など腹が膨れないものの話を通すのは、もともと簡単ではありません。会社を経営する人の固い頭に入りやすい企画書を書く必要があるでしょう。わたくしの書き方でよろしければ、お教えします」
白帆が丁寧に淹れた煎茶を飲みながら、日比は銀縁眼鏡の奥の目を細めた。
「へぇ、仔猫チャンを主役に?」
森多はメガネを額の上に押し上げ、顔から少し離して企画書の内容へ目を走らせた。
「白帆本人はぜひとも演じたい、全力を尽くすと言ってくれています。白帆からの推薦状にもそう書いてあります」
「ああ、この手紙が推薦状なのか。ふうん、仔猫チャンの見た目によらず、意外に気骨のある字を書くね。……ふむ。わかった、ぼくがサインして、会議に提出しておこう。結果は約束できないけれども、僕からもなるべく推すようにする」
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