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恋_2

俺が恋に落ちた時、篠原には既に好きな人がいた。 何年も一緒に居て、ずっと思い続けている相手が。 「想ってるだけじゃ伝わんないし、さっさと告白しちゃえばいいのに。そして振られて俺のとこ来てよ」 「何で振られる前提なんだよ」 「だって振られてくれなきゃ俺が失恋することになる」 「お前ね……俺はこのままでいいんだよ。今の形が一番いいの」 まるで兄弟のように育ったのだと言うその幼馴染は、俺と同じ男で同じΩ。見る限りかなり鈍感。 こんなに想われてるのに気付かないなんてさ……俺と代われっての。 「不毛な恋」 「それ言うならお前もだと思うけどね」 「俺にはまだチャンスあるし。こんだけ伝えてんだからいつか篠原が靡くかもしれないだろ」 「本人目の前にして言える勇気だけは褒めてやるよ」 「言わなきゃ何も伝わんないんだってこと」 横目で見た俺に篠原はまた一笑する。 「伝わらなくていいんだよ。俺はアイツが笑っていてくれればいいんだ」 篠原の言うことも分からなくはない。 俺だって篠原には笑っていてほしいって思うもん。 でもやっぱそれだけじゃ足りない。 「あー……やっぱ告って振られて」 「お前話聞いてた?」 「だってさぁ――」 突っ伏していた机から身体を起こしたタイミングで、講義室に駆け込んでくる影が一つ。 それはこちらに気付くと勢いよく突進してきて、隣の篠原に縋るように抱きついた。 「――みーちゃん……っ」 「……智?」 噂をすれば何とやら。 泣きべそを掻きながら篠原に抱きついたのは、例の幼馴染――水野 智也(みずの ともや)。 「こら、俺の篠原に抱きつくな!」 「いや誰もお前のじゃないから。で、智はどうしたんだ?」

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