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恋_3

篠原の声音はあからさまに優しくなる。 ちぇっ、何だよ。そんなにこの鈍感な幼馴染がいいのかね。 確かにどっちかと言うと可愛い顔してるけどさ……。 「うぅ……みーちゃん……実はね、今朝落とし物をしちゃったんだけど偶然通りかかった人が拾ってくれたんだ。それは良かったんだけどね、何かその人めちゃくちゃ変な人で、それからずっと付きまとわれてて……ぼ、僕のこと運命の人とか言い始めてぇ…っ…うっ……怖いよぉ……」 運命と聞いて俺は勢いよく立ち上がる。 「運命!まるで俺と篠原みたいな!」 「浅井うるさい。ややこしくなるから黙ってろ」 「はい………」 篠原の目がマジだったから大人しく腰を降ろして、口を噤んだ。 「よしよし、怖かったな」 なーにが、よしよしだよ。俺だって頭撫でられたい。 「みーちゃん……っ……ね、お願い、一緒に帰ろ?あの人絶対待ち伏せしてるもん…」 「ん、いいよ」 二つ返事で言う篠原に俺は抗議の声を上げる。 「俺と一緒に帰る約束は!?」 「………した覚えないけど」 「だめです、篠原くんは毎日俺と帰るんですーぅ」 「……別に一緒に帰ればいいだろ、三人で」 「えー…」 不満な俺に対して水野は目を輝かせる。 「人数多い方が心強いし、浅井くんも一緒に帰ってくれるの……?」 「ぐっ………俺はお前と帰るんじゃなくて篠原と帰るの!勘違いすんなよ」 ありがとう、と俺にまで抱きついてこようとしたから全力で避けて帰り支度を済ませた。 続いて篠原も準備を終えて、俺達は並んで講義室を出る。 篠原を真ん中に、左は俺で右は水野。 こうして並ぶと篠原の身長の高さが目立つなぁ、と隣を見上げた。 俺はまあ平均的だし、水野はチビすぎ。

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