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恋_8

side α 俺には好きな奴がいる。 幼い時から一緒に育って、後ろについて歩く姿が可愛くて、弟のように想っていたのに、それはいつの間にか恋心へと変わっていた。 だけど純粋に慕ってくれる気持ちを裏切れず、関係を壊すのも怖くて、俺は想いを飲み込むことにした。 笑っていてくれる事が俺にとっての幸せだと、そう言い聞かせて。 「今日はありがとう。またね、みーちゃん、浅井くん」 そう言って智は家の中へと入っていく。 講義終わりに泣付かれて、何事かと思えば変な男に付き纏われていると言う。 智はΩ故か男にしては可愛らしい容姿をしていて、昔からこう言ったことは珍しくなかった。 ……にしても運命ね。凄い事を言う奴も居るもんだな。 αとΩには運命の番が居るとされるが、出会う確率は1%にも満たないらしい。 「さて、俺達も帰るか」 と隣を見て、忘れていた問題を一つ思い出す。 隣のふくれっ面は浅井 宗一、俺を好きだと言う変わり者。 浅井はΩにしては珍しく、華奢な身体付きはしていない。 言われなければβと何ら変わりはない容姿をしている。 最初は俺も疑ったぐらいだ。 けど発情期明けの微かな残り香に、Ωだと認めたのは随分前の記憶だ。 「………今度はどうした?」 浅井は高校で知り合った友人で、本人曰く俺に一目惚れをしたらしい。出逢った時から今日に至るまで好きだ、惚れただと煩いぐらい口にしてくるが、真意の程は分からない。 あまりにも真っ直ぐに恥ずかしげもなく好意を向けてくるもんだから、本気なのかどうか分からなくなる。 「水野、ズルい」 「はぁ…?」 「俺も篠原に家まで送られたい!彼氏気分味わいたい!優しくされたい!」 ほら、こうやって。 良くも悪くも浅井は真っ直ぐだ。 あしらっても流しても、四年間変わらず俺を好きだと言うんだから。

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