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恋_20

見た目より筋肉あるんだ……勢いよくぶつかったのに全然ビクともしなかったし…。 胸とか腕とか筋肉で硬い…。体温高いし、俺なんかより全然男らしい……。 「………もしかして顔痛い?」 「え………?」 見上げたら思いの外、顔が近くにあって途端、心臓が跳ね上がる。 あ、これ………。 「赤くなってきてる…」 篠原の手が頬に伸びてきて触れた瞬間、身体が条件反射で動いて篠原と距離を取った。 「あ、だ、大丈夫!全っ然大丈夫!」 篠原は驚いたように目を見開いて俺を見る。 その次には怪訝な顔をして、それから短く息を吐き出した。 「………あっそ。じゃあ行くぞ」 「うん」 だめ。 だめだ。 いつもの痛みは耐えられる。でもこれはだめなやつ。 「これ激しめなやつだけど大丈夫なのか?」 前を歩く篠原が何事もなかったように言葉をくれる。 これはきっと篠原なりの優しさ。 「大丈夫、むしろ好き。あ、もしかして篠原苦手だった?」 「いや俺も好き」 振り向き様、ニッと上げた口角は篠原にしては珍しく、宛ら子供みたいな表情してる。 「せっかく来たんだ、楽しもうな」 「へへ、もちろん!目指せ乗り物制覇!」 「じゃあ急ぐか」 背中を追いかけながら、自分のうるさい心音を聴いた。 止まらない。 心臓が鳴りすぎて痛い。 ――届かない『好き』が溢れて止まらない。

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