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恋_23
巨大迷路は屋内型で二階建て構造になっている。
「ゴールは二階だな。階段を探そう、なるべく中心部に向かって」
「壁際じゃないの?」
「難しいって言われてる迷路がそんな簡単な訳ないだろ?壁際なら、壁に手を付いて歩いてれば辿り着けるしな」
「そっか………えへへ」
「何?」
「やっぱ格好いいなって」
浅井の“格好いい”と“好き”は最早口癖と言っても過言じゃない。
「はいはい」
「篠原好き」
「本当よく飽きないね、お前も」
「飽きない!ずっと好き」
ずっと……………。
「………例え俺が一生浅井を好きにならなくても?」
滑る様に口から出た言葉が最低な意味を持っているのだと気が付いたのは、浅井の目が伏せられ、きゅっと口を噤んだから。
「あ、悪い……傷付けるつもりじゃ――」
「――それでも、好き。ずっと好き」
「…………………」
ああ、そうか。
コイツは本気で………。
あまりにも明け透けでその真意をどこか疑ってしまう。
でもそれは俺が逃げているだけ……。
「浅井、俺は……」
「――俺、諦めないもん。辛いって分かってて好きになる覚悟したから。だから諦めたりしない」
「……………」
「俺が諦めるのは、篠原が誰かと幸せになれた時だけ」
「……………」
「本当は俺とがいいけど……。兎に角それ以外は絶対諦めないもんね!」
言い切った浅井は赤い舌を見せて「覚悟しろ」と宣言してくる。
それから数歩先を行って、俺へと振り返るといつものように笑って見せた。
「篠原遅い!」
「…………あんまり離れると迷子になるぞ」
「愛の告白のチャンス!」
「やめろっての」
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