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恋_28

言い淀む浅井は少し不貞腐れているみたいだ。 「いいったらいいの!」 「理由になってない」 「篠原しつこい」 「はぁ?じゃあ浅井は何が欲しいんだよ?」 「俺は………」 浅井の手からぬいぐるみを奪うと、辺りをキョロキョロと見渡し始める。 数分の吟味の結果、渡してきたのは30枚入りの箱入りクッキー。ほら、お土産とかでよく貰うやつ。 「これがいい」 「………そんなんでいいのか?形、残らないぞ?」 「忘れられない味にするからいいの」 「本当に?」 「本当。これがいい!」 ………頑固。 「分かったよ。買ってくるから外で待ってろ」 「うん……」 素直に頷いた浅井はそそくさと店の外へ。 普段は煩いぐらい押してくるくせに、こういう所は引いていくから調子を狂わされる。 アイツの中で何かしら線引きがあるんだろうけど。 何が良くて何が駄目なのか俺には分からない。 会計を済ませて外に出れば、浅井はまた熱心にガイドブックを眺めていた。 「あ、おかえり!」 「ん、袋分けてもらったから」 箱クッキーが入った袋を手渡すとそれはそれは嬉しそうに笑う。 「えへへ、ありがとう。毎日大切に食べる」 「………おー。味わって食えよ」 「何なら一枚一枚篠原を想って拝む」 「いやそれは怖いわ、流石に。で、次はどうする?」 問う俺に浅井は開いたガイドブックを向けた。 「次はここ!ここのクレープ食べたい」 「お前、本当クレープ好きね」 「大好き!もちろん篠原の奢りで!」 「はいはい。まだ全然チケット代賄えてないしな、喜んで奢らせていただきますよ」

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