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運命_9
「――で、今日は何?」
「今日はね、一緒にお昼ご飯食べたんだけどぉ」
「いや惚気はいいから。何で俺が篠原との時間を削ってまでお前の惚気を聞かなきゃならないんだ」
このペースだと間違いなくこのカフェのメニューを制覇してしまう。
「お前、この十日間進展なしだろ」
「だってぇ……」
「だってじゃない!」
水野は頬を膨らませてテーブルに視線を落とした。
そんな顔したって俺には通用しない。
「どうしたらいいか分からないんだもん……」
「……結局お前はどうしたいわけ?付き合いたいの?番になりたいの?」
“番”と言う言葉に水野は反応を示す。
驚いた顔の後、それはそれは恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「つ、番ってそんな……そりゃなれたら嬉しいけど……。まずは付き合いたい……と言うか字見くんの気持ちが知りたい……」
気持ち……。
「……じゃあもし字見の気持ちが変わってたら諦めんの?」
「あき……らめないけど……」
だよなぁ。
そう簡単に諦められたら苦労してない、俺も篠原も。
「だったら良いだろ。さっさと告白でも何でもして付き合うなり振られるなりしろ」
「分かってるけど勇気が……浅井くんには申し訳ないと思ってるよ。思ってるけど……」
踏ん切りがつかないのだと水野はグズつく。
実際水野にはああ言ったけど、俺も未だ迷ってる。
応援するべきか否か。
いや個人的には結ばれてくれた方が良いんだけど……だけどさ。
大体あの字見って奴がハッキリしないから俺までこんなモヤモヤしなきゃならないんだぞ。
あー、何かだんだん腹立ってきた。
「アイツって同じ科?」
「字見くん?うん、そうだよ」
「ふーん……」
字見の気持ちさえハッキリ分かれば、コイツだってこんなウジウジしない訳だし。全ての元凶はアイツだ。
俺が深く考えたって仕方ない。
人の気持ちなんて悩んだって変えられないんだから。
結局どうするかは本人にしか決められない。
俺がどれだけ立ち回ったって、水野も字見も………篠原も……なるようにしかならないんだから。
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