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運命_10
「浅井くんは?」
「何が?」
「みーちゃんと上手くいってる?」
「順調も順調。水野なんかに心配されなくても上手くやってますーぅ。何ならこの前の初デートの惚気でも聞かせてやろうか?」
水野に嫌味は通用しない。
目を輝かせるから尚の事痛感する。
「聞きたい!聞きたい!」
「…………やっぱいい。」
「えー、折角デート服一緒に選んであげたのに」
「なっ、何でデート服って知って……俺言ってないのに……」
「だっていつもと違う感じの服欲しがってたでしょ?だからみーちゃんとのデート服なのかなって。当たってたね」
コイツ……鋭いのか鈍いのかどっちなんだ?
侮れない……。
「楽しかった?」
「……まあ。めちゃくちゃ楽しかったけど……」
「ふふ、そっか」
微笑みの後、水野はらしくなく表情を曇らせた。
「僕とみーちゃんはね、親同士が凄く仲が良くて、小さい時から本当ずっと一緒に居たんだ。本物の……兄弟みたいに。だから僕にとってもみーちゃんはとっても大切な人」
「………………」
「だから絶対幸せになってほしいんだ」
大切な人、か。
「浅井くんになら安心して任せられるよ」
「……………なあ、その気持ちが恋愛感情に変わることってないのか?」
自然と言葉が溢れ切ってからハッとした。
わざわざ言う必要なんてなかった……教えてやる必要なんて……。
「……ないよ」
「…………」
「それだけは絶対にない」
やけにハッキリとした口調だった。
「それに僕は字見くんが好きだから」
もしかしたら水野は篠原の気持ちに気付いているんじゃないかと変な憶測が頭を掠めたけれど、いつものように笑うから俺は何も言えなかったんだ。
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