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運命_12
「だってさ」
男子学生はへらっと笑って馬鹿にしたように俺を見た。
「あ、おい!字見どこ行くんだよ?レポートいいのか?」
「……いい。来年頑張る」
「お前ね、諦め良すぎだろ」
立ち去っていこうとする二人の背中。
「待って、水野の事で話あんだけど……」
水野の名前に字見の足はピタリと止まった。
それから踵を返して俺に向けられる視線。
真っ直ぐで何だか冷たい。
俺、コイツ苦手だ……。
「………やっぱ知り合いだった。じゃあな城屋 」
「は?ちょっ、おい字見?」
止める男子学生の言葉なんて聞かず字見は俺の方へ足を向けると、有無を言わさず腕を掴み身体を引っ張っていく。
「え、何、ちょっと待って」
「話するんだろ?こっち、人居ないから」
引っ張られた身体は構内へと戻ると人気のない空き部屋へと押し込まれた。
「……何処ここ?」
「講義室。講義終わってるから人来ないし。で、話って何?」
入ってすぐに机へと腰掛けた字見は変わらず冷たい視線を寄越す。
「あ、ちょっと待って」
話の前に先に連絡入れとこ。
講義室出入口のプレートに書かれた“L−6”の文字を確認して、スマホで水野宛にメッセージを入れる。
俺がちゃっちゃと話つけて、後は二人で頑張れって算段だ。
「………話ないなら帰るけど」
「待って待って、あるから。あのさ単刀直入に訊くけど、水野ことどう思ってる?」
「………運命だと思ってる」
「いや………好きかって事なんだけど……」
「運命だからね」
「……………」
何か微妙に噛み合ってなくないか………?
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