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運命_15
それでも後味が悪いから手当の一つでもしてやろうかと言い掛けて、耳に届く足音に気が付いた。
水野か……?
でも何で足音二つなんだ?
いや、今考えてる場合じゃない。
この体勢はマズイだろ、色々と。
完全に押し倒されてる図だよ、これじゃ。
「おい、そこ早く退けろよ」
「助けてもらっといて随分な言い草だな」
焦る俺の内心なんて露知らず、字見は全然退けようとしない。
「ああ、もう!何でもいいから早く退け――」
無情にもその瞬間、講義室のドアは音を立てて開き、案の定そこには水野が姿を見せた。
最悪……って言うか、何で篠原も居るわけ?
俺が呼び出したのは水野だけで、何で隣に篠原まで居んの……?
「な、に……してるの…………?」
何れにしろ最悪な状況……。
「落ち着け、落ち着けよ。これは全然そう言うのじゃなくて、つまり――」
ああ、ほら目には涙溜めるし頬は膨らませるし、絶対誤解してる!
「水野、これは事故だから!絶対勘違いして――」
「〜〜っ!」
「あ、おい、待てってば!」
水野は言葉を残さずその場から走り去っていく。
「智……!」
篠原も咄嗟に呼び止めたけれど無駄だったようで、足音はどんどん小さくなっていく。
「お前が早く退けないから面倒な事になったじゃん!」
「面倒?」
「誤解されたの!俺とお前で!分かれよ、馬鹿!」
「何気持ち悪いこと言ってる?」
「こっちの台詞だ!馬鹿!もういいから、さっさと追いかけろよ!誤解を解け!」
一際強く字見の胸を押し退けてやれば、漸く重い腰を上げて水野の走り去った方へと駆け出した。
残されたのは床に転がったままの俺と立ち尽くしたままの篠原。
水野達のこと追いかけて行くかなって思ったけど、篠原は俺の方へと足を向けて傍らへと膝を付いた。
「……水野の事追いかけないの?」
「……アイツが行ったんだから十分だろ。それよりお前は?」
「?」
「何もされてないか?」
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