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運命_18
グッと堪えても涙腺は言う事を聞いてくれない。
「お前は喜ぶところなんじゃないか、普通。俺失恋したんだし」
「うっ………だって………っ……だってさぁ……篠原が泣かないんだもん……泣けよ、ばかぁ」
俺の言葉に篠原は優しく笑って「泣かないよ」と静かに返した。
「〜〜っなんで……」
「それ、俺の為に泣いてくれてんだろ?だったらいいよ、もう」
「よ、くない……っ……」
俺が見てきた篠原の恋は、いつだって我慢ばっかりだった。
手を伸ばす事も、想いを告げることもない。
そんな恋だった。
「俺の前で我慢、必要ないのに……っ……ばか…」
「我慢ってそんなんじゃ……あー、そうだな。それじゃあ――」
と言葉を切った篠原はまじまじと俺の顔を見る。
「触っていい?」
「……………んぇ?」
言うな否や目元の水滴を拭ったのは伸びてきた篠原の手。
「この前は我慢したけど、俺の為に泣いてくれた涙なら触れても良いよな…?」
「ぅ……ぇ……」
「泣き虫だよな、存外」
わ、あ…顔、近……っ。
目吸い込まれそ…格好いい……っ。
「あ、止まった」
止まらなかった涙も一瞬にして引っ込んで、代わりに心臓が煩いぐらいに鳴り始める。
好き、好き、大好き……。
出かけた言葉を飲み込んで、伸ばされたままの手を取った。
「浅井………?」
「…………いいと、思う」
「?」
「諦めなくても、いいと思う………」
「……………」
「ほら、俺だって何回も振られてるけど諦めてないし、だから……その………。て言うかそんな簡単に諦められるもんでもないし、うん、だからいいと思う……」
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