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運命_25

「見るか?」 「え!?み、見ない!」 俺の提案に後退って、更には変な構えまでして顔を赤くする浅井。 「ふっ、何だよそれ。変な格好」 「わ、こっち向けるなよ」 何にそんな顔を赤くしてるのかと思えば、どうやらDVDのパッケージに反応してるらしい。 特段マニアックな物ではなく、極一般的なAVのパッケージだ。 「そんなに恥ずかしがることか?見たことぐらいあるだろ?」 「え!?なっ…………ない…………」 「………え、一回も?」 「ないってば………!」 「マジか…………」 あまりにも目を逸らすから、それを本棚へと戻すと浅井はようやく胸を撫で下ろした様子。 にしても男なら誰でも通る道だと思ったけどな……。 思春期の男が集まれば自然とそういう話題になったり、身を寄せ合って貸し借りしたり、泊りがけで鑑賞会をしたり……そんなくだらない事ばかりやるもんだ。 驚いた俺の顔を見た浅井は取り繕うように拳を握り締め、身体を前のめりに傾けた。 「そ、そんなもの見なくたって、俺の妄想の篠原はもっと凄いし!」 ……………いやいやいや、妄想の俺、何してんの? 「どんな妄想してんだよ………」 「聞く?聞きたい?聞いちゃう?」 「あー…………まあ、うん、そうだな。聞いとくか」 「じゃあ仕方な――………え!?聞くの!?」 自ら提案したくせに肯定の返答に、困惑を見せた浅井は再び後退していく。 やっぱり………浅井は肝心な所で距離を取る。 ある程度の距離感から絶対に踏み込んで来たりしない。 「聞く。教えて」

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