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変化_3

懇願する俺に篠原はニヤリと意地悪く笑む。 「いつも見下ろす側だから、たまには見上げるのもいいな。見下ろす気分はどうだ?」 「………つ、」 「つ?」 「旋毛(つむじ)まで格好いい……」 「ぶれないね、お前も。ほら」 地面に足がついた刹那、俺は駆け出したはずなのに景色が全然前に進まない。 「こーら、どこ行くんだ?」 「はな、離して……帰る……!」 前に進めないのは首根っこを掴む篠原の手のせいだ。 「帰るって来たばっかだろ」 「た、体調不良!」 「体調不良の奴はそんな元気に走れませーん。ほら行くぞ、講義始まる」 無情にも俺の身体は構内へと引きずられて行く。 謝らなきゃ、突き飛ばしたこと……。そう思うのに言葉が喉に支えて出てこない。 「………ごめんな、金曜日」 「ぇ………」 「ちょっと意地悪しすぎた、ごめん」 先に謝罪の言葉を口にしたのは篠原で、呆けている間に首根っこを掴んでいた手が離れた。その代わりそれは優しく俺の頭に乗る。 「ごめん」 「あ……いや俺の方こそ突き飛ばしちゃったし……ごめん……」 「ん、じゃあおあいこって事で。千歌がな、また一緒に遊びたいって言ってて、だからまた(うち)に遊びに来てくれるか?」 「…………うん」 「じゃあこれで仲直りな」 ポンポン、と頭の上で二、三回跳ねた手はそのまま退けられて少し寂しいと感じる。 もっと撫でられたかったな……。 「あとさ、」 「?」 「今度は浅井の家にも行ってみたい」 「え…………えぇ!?」 「何だよ、だめだったか?」 「だめじゃない、けど………」 やっぱり、いや絶対、篠原変………。

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