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変化_5
篠原が好きだ。
出逢った瞬間、恋をした。
本能は求めずとも俺の心は運命だと胸が踊った。
最初に目を奪われたのは目鼻立ちのいい顔だ。柔らかな髪も、男らしい喉仏やゴツゴツした大きな手も全部に惹かれた。話をすれば優しい声音で、聴く度に鼓膜が心地よく振動する。ノリも良くて気遣いも出来る。知れば知るほど好きになった。
それから水野が好きなんだって知って、アイツを優しく大事にしてる篠原も好きだった。水野を好きな篠原も好きなんだ……。
篠原には不毛な恋だって言ったけど、本当は羨ましかっただけ。
いつも近くに居られるアイツが。
この手に優しく触れてもらえるアイツが。
ただ、羨ましかっただけ。
「…………浅井?」
「全部、好き」
「……いや、そうじゃな――」
触れた篠原の手は、寄せた俺の頬より温かい。
「ぜーんぶ、好き。篠原だから好き。篠原じゃなきゃダメ。俺の運命は篠原だけだもん」
「………………」
瞠目した目を見つめながら、とんでもない事をしてしまったとじわじわ実感が湧いてくる。
あ………ああっ!また、やってしまった…………!距離感………俺のばか……。
頬に当ててしまった篠原の手をそーっと離そうとしたら、それは全然離れてくれない。
力強っ……。
「し、篠原……俺が悪かったから手を離してくれると嬉しい…です……」
「………………初めてだ」
「な、何が?」
「浅井の方からこんなに俺に触れてきたの、初めてだろ?」
確かにそう……そうかもしれない……。でも何で……。
「そんな事篠原が知ってんの……?」
「ちゃんと見てるって言ったろ?浅井、好きって言う割に俺と距離取るから……本当は少し前から気付いてたんだ。でもそれだけで、ただ気付いただけだった」
「………………」
「でもさ、今俺、嬉しいよ。素直に嬉しい」
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