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変化_8
「覚えてるかな?この前一度会ったんだけど……。俺、浅井って言うんだ」
「………知ってる。兄さんに引っ付いてるΩだろ」
随分な言われよう……まあ、合ってるけど。
「よくΩだって分かったね?大抵の人はβと見分けつかないんだけどな」
「兄さんがよく話してたから」
「え!?篠原、俺の話とかするんだ!照れる、嬉しい!な、どんな話すんの?」
つい食い気味に詰め寄った俺に向けられるのは、引きの眼差し。
「……………きも」
………………やっぱり全然可愛くない。
それから興味を無くしたように臣海の視線は俺から逸らされる。
何を見てるんだと視線の先を追えば、そこには公園の遊具で楽しそうに遊ぶ千歌ちゃんの姿。
夢中なのか俺には全然気付いていない。
「ちゃんと妹の面倒見るなんて良い兄ちゃんじゃん」
「別に」
素っ気ないけど反応返ってくるだけマシか。
間近で見るとやっぱり目元そっくりだなぁ。
鼻と口はちょっと違う。
でも一番似てるのは………。
「………何?見過ぎなんだけど」
この声音。
「ごめんごめん、やっぱ兄弟だし何処となく似てるなって思って」
「……………兄さんの事好きなんだ?まあ、当然か。兄さんはαでアンタはΩだもんな」
「え?別にそんな事関係ないけど……俺は篠原がαでもβでも、例えΩでも好きだもん」
「はっ、なわけねーじゃん」
途端、嘲るように笑った臣海はもう一度俺の方へと顔を向けた。
「――どうせΩはαに媚びる生き物だ」
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