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変化_9
嫌悪の表情を見せているのかと思えばそうじゃない。
俺には悲しい表情に見えた。
「…………臣海はΩが嫌いなんだ?」
「違う……俺は………ただ……」
Ωを嫌悪してるわけじゃないんだ。
篠原から臣海はβだと聞いた。
反抗期はその第二次性の診断をされてから以降だとも。
話を聞いた時、単純に兄がαで自分がβである事が気に入らないんだろうと思った。けど………。
「………Ωが必要とするのは、いつだってαばかりだ」
やっぱり。
多分これは……。
「もしかしてさ、好きな子がΩだったりする?」
恐らく確信に触れたであろう事は、微かな肩の動きでわかる。
「………だったら何だよ?滑稽だって笑うか?βなんかがΩを好きになるなんてって」
「別にそんな事思わないって。さっきも言っただろ、俺だって篠原がどんなバース性でも好きだって」
「それはもしもの話だから言えるんだ。現実はそんなんじゃない………どんなに気持ちがあったって結局Ωが求めるのはαだけだ」
「………………」
Ωには数ヶ月に一度発情期と言うものが来る。
フェロモンを漂わせ、周囲にいるαやβの性欲を誘発させる。
抑制剤と呼ばれる薬を摂取する事で、難を逃れるケースが殆どだがそれでもフェロモンを完全に消す事は出来ない。
Ωにとって救いと言われるのは番を作ること。
番を持つΩはフェロモンの効力がその相手だけに限定されるからだ。
そしてΩを番に出来るのはαだけ。
αがΩの項を噛む事でしか番関係を成立させる事は出来ない。
それは確かに事実ではあるけど……。
「………ダサい」
「は?」
「篠原の弟のくせにダサい!」
眉間に寄るシワに思いっきり人差し指を突き立てて、グリグリと押し付けてやる。
「な、にすんだ!やめろ!」
「ダサい!格好悪い!男らしくない!」
「何なんだよ、一体……」
「顔は良いけど、中身はめちゃくちゃ格好悪い!」
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