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変化_11
何で俺の話?
もしや相当怒って何かしら仕返しを考えてるんじゃ……。
考え込む俺に篠原は「ありがとう」と口にした。
「え、何が?」
「何があったのかは知らないけど、弟と久し振りに目を見て話せた。浅井のお陰で」
「俺は何も……」
……て言うかどっちかと言えば怒らせた気がすんだけど。
「千歌は浅井の事大好きだって言うし、母さんも気に入ってたし、更には臣海まで興味持つなんて……篠原家キラーだな、お前」
「そ、そうかな?えへへ、嬉しい。じゃあ篠原が俺にメロメロになる日もそう遠くないな!」
言い切った俺に返されるのは無言の微笑み。
もちろん怒ってるものじゃなくて、優しい笑みだ。
篠原、最近こればっか………。否定されないのは嬉しいけど、どう返したらいいのか未だに分かんない。
おまけに胸が苦しくな――………え、何か本当に苦しい、物理的に。
視線を胸元に下ろせば背中から腕が回ってきていて、抱え込むように回されたそれは苦しいほど俺の体を締め付けている。
「――なっ、」
「――っはーぁ、浅井くんいい匂いだね!」
「おまっ、宮尾!」
背後からする頬擦りの感触に悪寒が走る。。
こんな変態行為する奴なんて俺の周りで一人しかいない。
「ありゃ、バレちゃった?」
「バレるわ!」
宮尾 秋由 は俺と篠原と同じ高校に通っていた同級生だ。認めたくないが一応友人というカテゴリーに属している数少ない人間。
宮尾はαで顔もそこそこ良い為か、篠原の次ぐらいにはモテた。ただ………性格に難ありで俺みたいに嫌ってる奴からは相当嫌われていた事も記憶に残ってる。
「離れろ変態。大体何でここにいる?お前この講義取ってないだろ!」
講義が始まるまであと十分とない。
「そーなんだけどさぁ、僕の取ってた講義休講になっちゃったから暇で暇で。たまには浅井くんの匂い嗅ぎに来ようかなって」
「来んな。二度と来んな。か・え・れ!」
「相変わらず篠原くん以外には冷たいなぁ。そんなとこも可愛いけどね」
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