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変化_14
プレミアシューを買ってもらって、ほくほくな気持ちで帰宅したのは数分前のこと。
そんな俺の気持ちは一体全体何処へやら………。
「――あ、あの…しの、篠原………っ!」
「………ん?」
「な、なななななにしてんの………?」
「確認」
俺がこんなにも挙動不審な理由は、今俺が篠原に後ろから抱き締められているからだ。
もう一度言う。俺は今篠原に抱き締められてる……!
しかも膝の上に乗せられてると言う最高にマズい状態で!
何で……どうしてこうなった………?
俺はプレミアシューを食べようとしていたのに。
まさに噛り付く瞬間、あまりにも篠原が無言で見てくるから「どうしたんだ?」って訊いたんだ。そしたら……。
「ちょっと確かめたい事あるから協力してくれるか?」
「俺に出来る事なら……何?」
「そっか、じゃあそれ置いて」
と言うので大人しくプレミアシューを皿に置いたのがいけなかった。
プレミアシューが離れた手を取られ、力強く身体を引かれたと思ったらあっという間にこの態勢に……。
確認?確認って何!?何確認すんの!?
「んー……これじゃ分からないな」
「な、何が?何してんの、ほんと……」
俺の言葉なんて無視して背中でゴソゴソ動く篠原。
「も、勘弁し――ふぁっ!?」
「ん、これか。確かにここならするな」
項に掛かる篠原の髪が擽ったい。
「――甘い匂いする」
「――っ!も、もう無理!ばかばかばか!」
無理矢理身体を捩って篠原の腕を振り払い、押し退けた。
「もうばか!」
「あ…………」
言いかけた篠原を振り切って堪らず外に飛び出す。
俺の家なのに何で俺が出てってんだろ……。
でも無理。とりあえず一人になって落ち着きたい。
心臓、止まっちゃうから…。
走る息苦しさよりも心臓の方が何倍も痛い。
「〜〜……ばか……っ……」
足を止めた先でも出てくる言葉は変わらなかった。
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