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変化_18
おそらくこの男がこの中で一番権力があるんだ。
「そ、そんなだめ――」
「――じゃあさ、いーっぱい喘げるようにそういう所連れてって?」
言いかけた水野の声を遮って、自分でも気持ちが悪い媚びる声音を男達に投げた。
そうしたら上級αの男はクスクス笑って、「いいよ」と答えながら俺の耳元に口を寄せる。
「友達の為に健気だね」
「ぇ……あ………っ……」
俺にだけ届いた言葉と咽返るほどのαのフェロモン。
やば……立ってらんな……。
フラついた身体を上級αの男に支えられ、何とか倒れる事だけは免れた。
身体を支える腕を辿って男の顔を見れば、楽しそうに笑っている。
コイツ……っ。
「じゃあ行こうか」
引きずられて行く俺の身体とその後ろを渋々付いて来る男達。それを追い掛けて水野が俺へと手を伸ばした。
「待って――」
「――邪魔すんなよ」
触れる寸前で動かない身体に鞭を打ち、渾身の力で水野を突き飛ばした。
小さな身体は簡単に地面へと転がっていく。
「あ、あさ――」
「――俺の楽しみの邪魔すんなよ。さっさと帰れば?」
いいから早く逃げろよ。お前がいる方が面倒なんだよ。
別にお前の為なんかじゃないし泣かなくていいんだっての。
手、擦り向けてんだし早く字見にでも手当してもらえばいい。
早く……早く………俺が理性保ってるうちに……。
「あ………っ……」
膝の力が抜けて崩れ落ちた所を男の腕が掬い上げて、俺の身体は宙に浮いた。
横抱き…………これが篠原ならめちゃくちゃ喜ぶんだけどな……。
「歩けないでしょ?運んであげるよ」
いけ好かない笑顔。胡散臭い。
でも何を企んでんだか知らないけど、俺はコイツに乗っかるしかない。
「うん、ありがと」
スルリと腕を首に滑らせて身体を寄せると、男の足は動き始める。
「なあ、本当にコイツ置いてくのかよ?」
「うん。そっちの子はもういいや。興味なくなった。今日はこの子を皆で可愛がってあげよう。行くよ」
揺れる振動に擦れる衣服にさえ身体は反応する。
「ふふ」
そんな反応を楽しむ男。
「…っ……お前、どういうつもり?」
「別にどうも。ただ君に興味を持っただけだよ。俺はね、楽しい事が大好きなんだ。沢山楽しませてね」
「………っ……」
「その強気な目がとろんと落ちていくのが楽しみだなぁ」
怖い、嫌だ、逃げたい…………助けて、ほしい……っ。
篠原、篠原、篠原……………俺はまだ、頑張れるかな………?
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